bibliomanifesutus microscopium II

セメン樽に顕微鏡

死んだ夢・柿の木坂

バスにぼんやり乗っていて、あ、そろそろだと思ってあまり良く見ずに降りるボタンを押して降りたら早すぎたようで家からはまだだいぶ遠い場所だった。やや急な坂道の両側にたわわに実をつけた柿の木があり、ああ柿の木坂じゃないかと思ったけれどよく見ると柿ばかりでなくカリンの木もたくさんあり鮮やかに実っている。

バスから降りたそのままの向きに歩いていくと (降りるまでは上りだと思っていたのに歩きだすと下り坂だった)、突き当りのT字路の向こう側にカリンを漬けたり乾燥させたりしたものを売る店があり、このあたりでは最近はカリンを商売にしているのだなと思う。

左に折れてすぐの路地をまた左に入ると (どちらかというと神楽坂の裏路地とかにありそうな) 古民家風の小さな雑貨屋が立ち並んでいて、こういうところあまり好きじゃないんだけどと思いながらも覗いてみることにする。

 

気がつくとどれかの店の2階の本棚の前に立っている。わたしは自分が死んでいることを知っている。死んだ理由ははっきりしない。特段の理由なくぷつんと死んだところで、ただそれを自覚している。わたしは読みたい本がいっぱい並んだ棚を前にして「こんなに読んでない本あるし書きたいこともまだ書いてないのに死んじゃったらもう何もできないそんなのやだやだやだやだ」と泣き叫んだ。