bibliomanifesutus microscopium II

セメン樽に顕微鏡

わたくしに日本語を教えてくれた人

プーさんやうさこちゃんの柔らかな言葉。
ファージョン作品の軽やかかつ重たい文体。
「夜中であるくものたち」は今でも年に数回読み返している。


眠りにつくまで目を閉じているときに脳裏をめぐるいろんな言葉の断片の、少なくとも何分の1かは、子供の頃から浴びるように読み続けた海外児童文学の言葉であり、その多くは石井桃子さんの手になる翻訳だった。
翻訳の言葉を通して私は書物の世界に入り込み、あらゆる風景を眺め、音を聴き、匂いを嗅ぎ、味わってきた。
原書で読めるようになっても、本当に優れた、美しい翻訳の言葉は、書物の扉を開く鍵であり続けている。


石井桃子さんと、それから瀬田貞二さん、内藤濯さん。
この方たちこそがわたくしに日本語を教えてくれたと思っている。
とうとうみんな亡くなってしまった。
ほんとうにありがとうございました。 *1

*1:この日記は当時別のスペースに書いていたものですが、そちらを段階的に撤退するにあたってどうしても保存しておきたかったためこちらに移しました。