bibliomanifesutus microscopium II

セメン樽に顕微鏡

遊びの続き

「眠れないの。お話して」「面倒だから嫌」「お願い」「じゃあしてあげる」
「あるところにひとりの女の子がいて…」
そういって始まるのは私と同じ名前を持った女の子の世にも悲惨な転落の物語。お母さんが死に継母がやってきて苛められる。そうでなければお父さんが死に家が貧乏になって遠い町に働きに出され、学校も行かず朝から夜まで工場で働いて、何ヶ月も何年も経ってやっと家に帰るとお母さんはもう別の人と結婚してしまってお前のことなんか知らないと言う。私と同じ名前のその女の子は広い世界でたったひとりで生きて行かなくてはならない。聞いている途中から泣き出してもうそのお話はやめてと頼む私を、してやったりと面白そうに眺めながら母のほうが先に眠りにつく。

 なんだ。ようするに今もあのときの遊びの続きをしているのか。