bibliomanifesutus microscopium II

セメン樽に顕微鏡

カシツキ

何歳のときだか忘れたけど子供の頃、母の知人の家で初めて加湿器を見た。
「あら加湿器?」
「そうなのよ。ちょっとスイッチ入れるわね」
みたいなやりとりが母とその知人の間にあって、口を出さずにおとなしく聞いていた子供は、しばらくするとなにかおいしい餅菓子のようなものが出来てくるのだろうと密かに待っていたのだけれど、何も起きないまま帰る時間が来て、きっと出来るのが間に合わなかったんだと内心で納得したのだった。それが「菓子搗き」ではなかったことをしばらく経ってからなにかのはずみに悟って、あのとき聞いてみたりしないでよかったと小さく胸をなで下ろした。
それにしてもどれだけ食い意地の張った餓鬼だったのか。